三船の前に三船なく、三船の後に三船なし。
在りきたりの言いふるされた表現しか思いつくことが出来ない日本映画を代表する男でした。
「世界のクロサワ」 と共に 「世界のミフネ」 と呼ばれました。
いまの世代のイケメンは、背が高くて足が長く、顔が小さくて本当にカッコいい。
けどどうでしょう?上のフラッシュの最後の写真をご覧ください。
こんな苦みばしった男前が、今のこの国にいるでしょうか?断っておきますが草食系じゃありません。
映画「羅生門」は世界に衝撃をもたらしました、「七人の侍」 の菊池代のコピーが他の役者に可能でしょうか?
マカロニ・ウエスタンにリメイクされた 「用心棒」 の彼の演技は時代劇のマスター・ピースであり、黒澤の演出と共にその作品は海外映画の土台ともなりました。
豪放磊落・無口・頑固・無愛想、「男は黙って」 を地でいく、およそ昔の日本人の男が持つ要素を凝縮したような表情!
そして 「レッド・サン」 ではブロンソンやアラン・ドロンを相手に米国TV 「SHOGUN」 で評判の日本人になりましたが、西洋人にも臆するところが全くない堂々とした日本の男でした。
反して彼には繊細で、細かい感性が合わせ備わっていたようです。
彼の生前の写真を中心にこのコラムを構成することをお許しいただき、海外のビッグ・スターを相手に堂々の演技を見せるこの映画を今回は取り上げました。
1966年公開のカー・アクション映画 「グラン・プリ/GRAND PRIX」です。
監督は 「フレンチ・コネクション2」、「RONIN」とアクション映画の名匠ジョン・フランケンハイマーです。
当時すでに大スターであった2人、ジェームス・ガーナーとフランスの名優イブ・モンタンを向こうにまわし本田宗一郎を彷彿とさせるチーム監督の役柄でその渋い演技を披露しています。
1966年という年代からは想像もつかないこの映画の驚くべき高画質トレイラーがあります。
モナコなどの映像も入っていて今のF1ファンにしても興味深いFootageだと感じましたので紹介します。
臨場感があってCG にない趣きは、これまたいいものです。
「世界のクロサワ」 が三船に贈った言葉をご紹介して今回の幕引きといたします。
「三船君とはありとあらゆる試みをして、共に映画を創ってきた。やれることはすべてやったつもりで心残りはない。もう二度とあの才能に会う事が出来ないのはなんとも淋しい」
サブ・タイトルの 「黒澤のばか野郎!」 は大酒を喰らい、その酔った勢いで黒澤家を空砲をバンバン鳴らしながらジープで走り回ったさいに彼がいった言葉です。葛藤があったんですね二人には。
黒澤をして "才能" といわしめた男、それが三船敏郎でした。
やすらかに、そしてさようなら。