キャリーを挟んで2作目のアメリカン・ニュー・シネマ 「Bonnie and Clyde・俺達に明日はない」 です。
なんだよ ! と思わせる邦題タイトルの多い中お見事命中とはこの映画のタイトルだと思います。
クルマといえば
ハワイで見たあの赤のポルシエ928の汚さ、アラモアナ・センターからホテルまで乗ったキャブのサスの抜け具合・・・フランスの街角のシトロエンの年季の入り用、フィリピンはマニラのジプニーのトラックそのものの縦揺れ、台北ではバスと停留所の間を堂々と通り抜ける輩達のクルマ、輪をかけて観光で乗った旧型ブル-バードで渓谷の細道を時速にして80Kmでぶち抜いて笑う運転手などなど。
道路は整備されクルマ自体もおそらくは世界一キレイなのが我が国でしょう。
クルマと運転マナーにはお国柄が良く現れるものです、不思議に。
生粋の気の強さとおおらかで図太い肝に惹かれ合った二人の愛の無法の物語。
こ端的に表現すればこの映画のストーリーはこうです。
線路は引かれその上を搖るぎなく走るように見えて、その稼業は銀行強盗。事実のボニートクライドの時代が世界恐慌や禁酒法の暗黒なアメリカの時代もあっていわば二人は逆説的に憂さ晴らしのヒーローのようにも取り上げられました。
人々の欲求不満や虐げられし生活を撃ちぬく代弁者でもあるかのように。
演じるは恐らくハリウッドきってのプレイボーイのウォ-レン・ベイティ。
国産ナタリー・ウッドから始まりジュリー・クリスティー、ダイアン・キートン、その足で仏産にも手を付けイザベル・アジャーニからカトリーヌ・ドゥヌーブ果てや音楽系のマドンナまで。
他の役者さえ羨んだこのモテ男がクライドを、フエィ・ダナウエイがボニー・パーカーを演じています。
悪運が尽き果てるまで走り続けてゆく二人には噛み合わない男と女の歯車もありましたが、どうやらその素行とは裏腹に心は通じ合っていたようです。
アメリカを代表する俳優ジーン・ハックマン、今なら癒し系の大スターになれるかも「C・W・モス」の役名で寸足らずなのに強烈な憎めない笑顔が忘れられない個性派マイケル・J・ポラードやエステル・パーソンズが脇を固めました。
邦題のタイトル 「俺たちに明日はない」 そのままに逃避行を重ねたボニーとクライドの唯一の望みは逃げ通せるクルマにあったようです。
当時、最も強力で早いといわれたこの怪物を好んで逃走用に使った二人でした。
強力なV8エンジンのフォードでいつ終わるともしれぬ悪運という魔物とのスリリングなドラマの終焉は草薮から飛び立つ鳥の群れに重なるマシンガンの咆哮によってその幕が落とされます。
「ゴッドファーザー」 でイケイケのソニーが料金所での一斉射撃で崩れ落ちたのもマシンガンの唸りの中でしたね。
彼らの残したものはその弾丸の傷痕が虚しく残った、そのクルマだけとなってしまいます。
無謀な賭けの落とし所が晴れやかな筈もありません。
以前にあったハッピー・エンドの終焉はこのアメリカン・ニューシネマの台頭により過去のものとなります。
不可思議なのはこの時代背景が今の時代と重なるような雰囲気を持ちあわせていること。
複雑に絡み合った経済・通貨による国と国の背景は膿を覆い隠してなお巧妙です。
混沌(カオス) という言葉が好んで用いられる現在が悪運が尽きた時系列に立っているのか、ただ脳裏をかすめるだけの一瞬の憂いなのか、
「好事魔多し」 とは噛みしめていなくてないけない言葉なのかもしれません。
杞憂であって欲しいと最近考えることがあります。