ジェイムズ・リー・バーク原作の刑事物 「デイブ・ロビショー・シリーズ」 の映画化でアレック・ボールドウィン主演の 「Heaven's Prisoners/天国の囚人」 です。
酒に溺れ、妻と離れた元刑事を主人公としたミステリー・ハードボイルドです。
いきなり教会での懺悔のシーンから始まる展開は主人公デイブの過去とその後の物語の行末を暗示する気にさせられ、刑事を辞めたその男が南部ニューオリンズの沼地で釣り客相手のボート屋を営む主という設定はハードボイルドの解釈がどちらかと言えば大都会の一匹狼的な主人公を想像する向きには異質な感覚が残るはず。
ですが南部での黒人軽視や差別にフォーカスしたと観れば、それも分かる気がします。
傍から見れば、「もう大人しくしてりゃいいのに」 と思いたくもなる、
そうはいかないかつて刑事根性がむくむくと首をもたげる男の性とそれに絡む3人の女、ジメジメとした沼地での展開の切り取りが妙にこころに刺さってきます。
どうしようもない男のジレンマをアレック・ボールドウィンが好演、よく言えば古典的な男前ですね、端正な顔立ちの俳優だと思います。
この映画に負けず劣らず私生活も荒れましたけど。(笑)
この映画ののもう一つの面白さはデイブ・ロビショーに絡む三者三様のオンナたち、ごく普通の家庭を作りたいオンナ、デイブにほのかな想いを寄せるストリッパーに崩れた幼馴染み、組織のボスで格好だけの男を裏で操り色仕掛けを駆使してデイブを殺そうとする蝶の刺青をしたオンナ。
融通の効かないタフな中年男の周りを囲むこのオンナたちとデイブとの駆け引きが、映画と決めつけておけないひとの生き様をあらわしていて好感が持てます。
特に
彼の幼馴染みでもあるババ・ロックの女を演じたテリー・ハッチャーのまさに体を張った演技が見どころ。
デイブが住む家の前で偶然パンクをしたように装ったクローデットとロビンが鉢合わせをするシーンはこの映画の中でわたしの最も好きなパーツです。
またババ・ロック演ずるエリック・ロバーツは「The Darknight」、「The Expendables」 にもクレジットされている名優でもありますのでご注目を!
恋して生活をともにするアニー(ケリー・リンチ)を敵の銃弾で失い嗚咽して号泣するシーンは
虚しくもあり哀れです。
しでかした事の大きさの償いは天秤の真ん中に、そして残ったアラフェアにベッドで寄り添うデイブに天使のようなその手が添えられます。
後先の見えない暴走の先にある安堵の時が天上にしかないかのように。