Earth,Wind&Fire/「デロメラニコン」光の撮影と演出

 世界に現存するのが3冊のみ、1666年に出された稀覯本は悪魔がしるしたとされる「デロメラニコン」 という書物の版画がそのまま使用され、その天文学的な価値から世の稀覯本収集家を渡り歩くと言われます。


富豪の稀覯本コレクターを言葉巧みにすかし、これを買い、売りさばく背取りのような役をジョニー・デップが演じた1999年ロマンポランスキー監督メガホンの 「ナインスゲート/The Ninth Gate」 です。

ボォ~っとほのかに光るガス灯の火のように、ひかりと影・緑と風に音響が溶け込み、トロトロと皿から落ちる油のように物語は進んでゆく。

テンポが遅いわけでなく、とげとげした現代の映像技術のそれに急かされることがない!

何ともひかりと色合いが優しい映像美をポランスキーは粛々と見せてくれました。

 

 ジョニー演じるコルソは悪魔学の研究家で富豪の稀覯本収集家バルカンから彼が持つ3冊のうちの1冊の真贋を突き止めることを依頼され、残る2冊を追ってゆきます。

一見して困難と思われるこの仕事を依頼するバルカンはコルソに 「カネで動く奴が最も信用できる!」 と言い放ちますが、いつのときも人は「これ」 に言いなりにされ、友人や時には家族さえも危めてきました。魂を売るとはこの事では・・・

 

 ジョニーの出演作にはオカルテイックなものが少なからずあってわたしは大好きです。こういったアンチ・キリスト的なものも。

逆説でいうのではなく、この世には言われ続けて久しい科学で解明できないものがあるのではないか・・・と。そう、思えるのです。

隣や日常にある筈です、あんな人が何故こんな残酷なことをとか、どうしてこんなにいい人がこのような酷い目に遭わなければならないのか・・・とか。

それはこころの奥底にあって、善良なものを排除せしめんと企てます。


買い手がいるということなのでしょう。人のその邪悪なものを・・・

 

 レビューでは辛い採点もありますが、いい映画を観たと感じています。90点です。

ポランスキーの細君も謎の女で出演、巧くジョニーと絡んでいます。

 

わたしからすれば、

 

存在すると思わせるのが神、存在しないと思わせるのが悪魔。