- 【Establishment】社会的な権威を持っている階層 -
クリスチャン・ベイル主演、「American Psycho/アメリカン・サイコ」 です。
若くして一流企業のバイス・プレジデント、食事は予約の必要なレストラン、城は高級なアパートメント、モイスチャーライザーを吟味しエステに通い外見への投資は厭わない。
そんな80年代のヤッピーである上級階層の男とその精神の闇を描いた衝撃作です。
スーツのデザインもタイロッケンのコートも、高級なタイも、この映画のひとつのファクターであってバブルのそれをおさらいするよう。
難解な部分もあり取っつきにくい映画ですが、見るからに神経質そうなベイルはこの主人公には適役だったと思います。アメリカン・サイコという社会病魔を具現するにも。
ショッキングなシーンと性描写でR-15+でも足りないくらいですが。
何事にも無関心で、人間関係の希薄なアメリカに巣食う闇を主人公に覆い被せて進んでゆく描写は、見ず知らずの人たちがツイッターでつながり突如街なかでパフォーマンスを繰り広げる 「フラッシュモブ」 とは異次元の体・・・ですが心に潜むのは人間関係が希薄な意識の現われ、又は寂しさとも言えて。
自己表現が根付いた現在では、「出ぬ杭は抜かれる!」 ポジティブな前者なのか、仲間を探し隙間を埋める手立ての後者なのか、むずかしい暗号です。
無関心な世界であろうと、人と似ているのかお金も寂しがり屋のようで仲間のいるところに向かうとは、なんとも矛盾!
あの頃、後輩の住んでいたマンションのふた隣りが火事になって電話が・・・。そいつの部屋は大丈夫だったんですが、全く隣付き合いのないマンションだったらしく、炙り出されたその部屋の住人と物々をみてそいつは腰を抜かしたそうです。
恐いお兄さんたちが、必死でVHSテープやそれのダビング機材を運び出してたそうです。
色とりどりの肌に彫ったTシャツを着て・・・ (笑)
この映画の主人公のキッチンの引き出しに収められた包丁は寸分の狂いもなく並べられ、名刺のデザインや紙質・字体に懲り、それらを誇らしげに見せ合う。
でも、名刺で推し量れないのが “ひとのこころ” であることに違いはありません。
「鉄の女」 と称された英国も元サッチャー首相がその人生を終えました、ナタを振るうような強気の政策と性格で記憶にある彼女も晩年は自分の部屋でひとり泣くことが多かったと家族が伝えています。
こころまで鉄で出来ている人が多くない証明でしょう。
都会に暮らそうが、田舎で住もうが
人と人の心のつながりこそが、そうした闇を照らす唯一の明かりだとやはり思えます。