COLD MOUNTAIN バカな男どものせいよ!

They call this war a cloud over the land but they made the weather,

and then they stand in the rain and say

 

"Shit,its rainin'!"

 

“戦争”って雨を自分で降らしておいて

 

“大変だ、雨が降ってきた”と

 

 単なるラブストーリーではないと思っていた通りなかなか飽きさせない構成で一気に見れました。
主題は南北戦争、その大きなアメリカの歴史の節目を沿って流れる河のように主人公エイダとインマンの純愛(悲愛)が描写されています。
戦争のスペクタクルやタイマンのガンファイトも用意されていてアカデミー賞7部門ノミネートも十分納得の出来映えです。

 実はジュード・ロウの「レポ・メン」を見てから(グロですがこの作品の彼が好きだなぁ、地でやってる。スターリングラードも良かったし)、どうしてももう1本彼の作品を見てみたいと、そしてニコール見たさも重なってdvdで購入しました。
レニー・ ゼルウィガーがアホほど上手くてドンピシャですが、これ自体はニコール・キッドマンの映画ですね。
好き嫌いは置いといて白い雪より美しいお方でした。ここらは「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラといい勝負、浅く薄っぺらいお嬢ちゃん演技で終わるかとおもいきやどっこい細い体に似合わない一本スジの通った演技でした。(ゴールデングローブ賞 主演女優賞/ノミネート)
ジュード演じるインマンはというとこれは役どころが難しい、ハマったキャスティングとはわたしには思えず個人的に同じ戦争物で重いながらも「スターリングラード」のヴァシリ・ザイツェフ役の方がいいと感じました。
脇もナタリー・ポートマン、フィリップ・シーモア・ホフマンやドナルド・サザーランドなど曲者ががっちり固めます。

井戸に映し出される未来の予言と大ラスの現実の巧みな交錯や、夫が戦死し病気の赤ん坊を抱えて苦悩の中で暮らすナタリー演じるサラがインマンと肌を合わし流す複雑な涙、邦画時代劇さながら「勝った!」も束の間、口から血しぶきを噴く演出には十分採点が入ります。加えてヴィージー牧師役のシーモア・ホフマンにおいてなど黒人奴隷の女を孕ませてはなお通りすがりの悦楽に浸る罪深さなど。

 

戦争は悲しい・・・戦争を越えて生まれるものがあるとしても。
インマンが長い旅の途中に出会う老婆は仔山羊を生きるために殺します、インマンはサラの家で飼われていた豚を殺し焼いて皮を剥ぎます。ひとが生きてゆくために彼らはそうなる。
餓死する寸前に追い込まれた人間はアレルギーのことなどかけらも気にしなくなる、海で泳ぐしかなかった頃にアトピーなど聞きもしなかったのと同じように。
ましてイルカ漁がどうの捕鯨は禁止になどという概念がいかに陳腐であるかということをこのアメリカ映画は率直に教えてくれる。
戦争とはヒトが生きることのさがを彫刻刀で荒彫りするもの。

夜が明けるにくらべてその傷が癒えるにかかる時間はまた余りにも長い。
インマンの旅と重なるように・・・

プラトニックなエイダとインマンの愛と戦争の悲劇の対比がこの映画の真骨頂といえます。