Black Swan / No wonder gave her an Oscar

 

 

 狂気のメイキャップが記憶に新しい ナタリー・ポートマン主演ブラック・スワンです。


最初見た際にはなにが何かよく分かんなくて、2回目で精神的なスリラー映画なんだと納得。

妖艶で情欲的な 「黒鳥」 の舞いを要求されるニナは次第に弱く脆い精神によって自らを見失っていく。

自分のかなわなかった夢をニナに託す母親エリカと住むアパルトメントはさながら 「人形の家」 、籠の鳥でバレエに専念するニナに無いものがあるとすれば性的な側面であることがわかる筈。ダーレン・アロノフスキーはニナの幻覚・葛藤を様々な演出で引き出そうとしています。

 

電車のくだり、狭い通路ですれ違う自分自身(幽体離脱感)、背中に生える黒い羽。

不快な事象を繰り返し積み重ねてはニナの精神の脆弱さを演出する。

 

 以前、読んだ自動車誌の記事がよぎりました。

「ポルシェ至高のエンジェル・ハイ」 だったように記憶しています。RRのハイポテンシャル・エンジンのみが生み出す加速感があるという内容でした。

少々無理に照らし合わせば、終焉に向かうニナの精神過程はのめり込むが故のエンジェル・ハイ・・・それを達せずにはおけない人間関係や環境。

ひ弱なこころのニナはやがて自らを追い込み、しかし鍛錬することで自虐的なハイに落ちていく!

これは究極のアスリートにしか分かることのない感覚なのかもしれません。

この映画の出演にあたり1年をバレエの練習に費やしたというナタリーはそれを演じるのに十分値するのは他の役者の踊りと比べれば明らかです。

 

 

 オーシャンズ12で難解なレーザーをくぐり抜けたヴァンサン・カッセルのダンスの下地はこの映画に適役といえます。

クリムゾン・リバーからその才能の片鱗はありました。